野生動物の庭~Wildlife Gardening~

ピートが入った堆肥を今すぐやめたい理由とは?英国ガーデニング業界の地球に優しい取り組み

Photo by Maksim Shutov on Unsplash

ここイギリスでは先週ずっと18度くらいの温かい日が続いたので、庭の植物も新芽がすこしずつ出てきました。残念ながらイースター休暇の今週末は冬に戻ったかのように氷点下の予報が続いていますが、それでも毎日庭にでて小さな変化を感じています。

 

ところで、本格的にガーデニングを始めてから、コンポスト(堆肥)の減りに驚いています。とくに、我が家は庭がほぼ手つかずの状態で前のオーナーから引き継いだので、土の改良やマルチングに堆肥をどんどん使うんですよね。日本とイギリスでは使われる土や堆肥の種類はすこし違いますが、それでもガーデニングをすると土のことを考えなければならない点は同じかと思います。

 

そんなガーデニングには欠かせない堆肥ですが、近年ピート(ピートモス)の使用を早急にやめようという動きが活発なのを知っていますか?イギリスではガーデニング業界が必死でこのピートの使用を根絶しようと動いています。今回の記事では、ピートの使用がなぜ問題なのかについて、そして、イギリスのガーデニング業界で他に話題になっている地球に優しいガーデニングの取り組みについて書きたいと思います。

 

イギリス人の環境に関する意識

ピートについて考える前に、まずは RHS(Royal Horticultural Society = 王立園芸協会)が イギリス人の成人2056人を対象に行った環境に関する意識の調査 があったので、イギリス人が環境についてどう捉えているのか、簡単にチェックしてみたいと思います。

この調査の結果では、

  • 70%が、環境を気にかけ、自分ができる対策をしたいと答えた
  • 50%が、庭の最大の利点として野生動物の保護に繋がることを挙げている
  • 雨量の少ない地域に住む人の44%が、雨水を貯水している
  • 41%が、殺虫剤や化学肥料の使用を制限している
  • 32%が、庭でのプラスチックの使用を減らしている
  • 60%が、木や垣根を植える最大のメリットの一つとしてCO2の吸収を挙げている

ことがわかりました。イギリス人の間では、エコなガーデニングや生態系への影響に対する関心は比較的高いことが見て取れます。逆に、課題としては洪水や騒音、大気汚染への対策としての植物の役割についての理解度は低めだったことが指摘されていました。

 

個人的には、木や垣根を植えることのメリットとして二酸化炭素の吸収を挙げた人が60%もいたことが、割と驚きでした。それだけ、一般人の間でも温暖化などへの問題意識が高まっているのだと思います。また、殺虫剤などの使用を控えている人も、半数には届かなかったものの、多くいますね。ただ、思ったよりプラスチックの使用を減らしている人が少ない印象なのですが、これはガーデンセンターの苗が入っているプランターやコンポストの袋など、個人では避けにくい部分もあるためなのかなと想像しています。

 

イギリスの人たちの環境への意識がわかったところで、本題に入ります。ピートと聞いて、みなさんはどんなイメージがありますか?

 

そもそも、ピートとは?

ガーデニングをしているなら、ピート、もしくはピートモスという言葉を聞いたことがあると思います。イギリスでは昔から、ごく一般的な堆肥の成分として、ピートがほぼ全ての商品に使われていました日本でも、酸性の土を好むブルーベリーなどの土壌改善用に売られていたり、ピートモスとしてガーデンセンターなどで普通に目にすることがあるかと思います。このように特段珍しいものではないピートですが、それが一体何なのか、あまり詳しく考えたことがなかった人も多いのではないでしょうか。

 

Photo by Grant Durr on Unsplash

ピートとは、イギリス北部のスコットランド地方や、日本なら北海道などの寒冷な湿地帯の原野で採れる泥炭のこと。泥炭は「植物が長い年月をかけて炭化してできた泥状の土」のことであり、ピート入りの堆肥やピートモス(泥炭を脱水したもの)は、この泥炭を採取してきて成分として土壌改良などの目的で使っているということなのですね。ガーデニングの他にはウイスキー造りにもピートが使用されるとのことで、私たち一人ひとりが買うピートの量は知れていたとしても、総合的に見ると年間で採集されるピートの量はかなり多そうだと想像がつきます。

 

ここで問題になるのが、そのサステナビリティ(採取しつづけることの持続可能性)です。寒冷地の湿地帯でしか生成されないピート。さらに、その地方に生える植物が炭化して堆積して泥炭になるまでに、どのくらいの時間が必要かということです。調べてみて驚いたのですが、ピートが出来るまでには何百年~何千年もの時間が必要なのだそう。ピートは1年になんと1㎜しか生成されず、1mのピートが堆積するまでに1000年かかってしまうというから、それをどんなスピードで消費しているのか考えると恐ろしくなります。実際、自然に近い状態のままの泥炭地(ピートが一定の深さまで存在する地域)は、イギリスに関して言えばもう20%しか残されていません。ですが、本当の問題はピートの枯渇ではないのです。

 

ピートを使い続けることの本当の問題点

上記のようなことを知ると、単純に「このペースで使ったらすぐ枯渇してしまう資源だから、ピートはサステナブルじゃない」という理由でピートの使用が問題なのだと思うかもしれません。けれども、本当の問題はもっと深刻なようなのです。

 

Photo by NASA on Unsplash

というのも、私たちがガーデニングの堆肥などにつかうピートの採取がされる泥炭地には、ピートによって放出が抑えられていた大容量の炭素が蓄えられています。つまり、ピートを掘り起こして採取することで、ピートがその地に育ち始めた氷河期時代の終わりからずっと貯めこまれてきた、大量の炭素が放出されてしまうのです。この事実を知ると、地球温暖化が問題になっている現代でピートを使い続けることの怖さがわかりますよね。ちなみに、樹木が何百年単位の寿命を持ち、枯れたら比較的短期間で朽ちるのに対して、ピートは枯れても完全には朽ち果てずに堆積し、何千年単位で炭素を抑え込んでくれるそう。実際、イギリスではいま、戦後の林業などで植えられた樹木を伐採して、樹木で占められていたエリアに泥炭地を復活させる試みも始まっているとBBCのニュースで紹介していました。単純に植林は環境に良いイメージだったのでこれには驚きますが、それだけ泥炭地の維持・再生は重要だということです。

 

これらを踏まえると、泥炭地を復活させるぶんとも、減らし続けることは今すぐ止めなければと感じます。イギリスでは2020年までに徐々にピート入りのコンポストを廃止する予定でしたが、それが達成されておらず、2021年はピートの使用をきっぱり禁止すべきだという声がガーデナーたちから上がっています。採取されたピートの用途はガーデニングに限ったことではありませんが、ガーデニングを楽しむ一個人としても、私たちひとりひとりの消費が与える影響を考えざるを得ないなと思いました。もっとも、堆肥の販売元がピートの使用をやめることが一番大事なのはもちろんですが、買う人がいなければ販売者はピート入りの商品が作られないのも事実です。わたしたち一人ひとりがピートフリーの堆肥を選んだり、ピートモスを買わない選択を続けることで、ピートが使用禁止になるまでピートフリーの動きをサポートし、加速させることができると思います。ちなみに、私はすでにピートフリーの堆肥しか買っていません。日本ではそもそもピートフリーの堆肥が多いはずなので、ぜひピートやピートモスを買わない・使わないことを心がけてみてください。

 

殺虫剤や除草剤も、今すぐ止めませんか

お庭の害虫の対策は、みなさんどうしていますか。もし殺虫剤を使っているなら、そろそろ止め時かもしれません。以前の記事でも触れた通り、わたしは去年からワイルドライフ・ガーデンづくりの一貫として、単生蜂の巣箱を置いているのですが、この単生蜂を含め、ミツバチ、トンボなどの多くの蜂類や益虫が、殺虫剤の毒性に大きなダメージを受けているのです。研究でわかったところによると、この10年で殺虫剤の使用自体は減ってきたものの、それにも関わらず蜂への殺虫剤の影響は2倍になってしまったそう。上記の記事によれば、現代の殺虫剤は人間や野鳥、哺乳類への害は少なくなって使用料も少なくて済むのですが、蜂やミミズなどを含む無脊椎動物にとっての害はむしろ大きくなってしまったとのこと。その悪化した毒性が使用料の減少を上回って蜂やトンボ、ミミズなどに致命的な影響を与えているため、少ない量だからいいよね、では済まないということのようです。さらに、色々な技術が発展した現代でも、野菜や果物の受粉は大部分をミツバチや単生蜂、その他の受粉を担う昆虫に依存していて、蜂の減少も殺虫剤が一因と言われており、これは食糧危機にも繋がる問題です。昆虫が生態系の一番下の層を支えていることからもその影響は計り知れず、殺虫剤の使用はすぐにやめるべきだと分かります。

 

Photo by Trollinho on Unsplash

イギリスでは蜂の減少に一般人のあいだでも高い関心が集まっていて、単生蜂の巣箱やバグ・ホテル(昆虫の隠れ家)を庭に置いたりして、蜂やその他の昆虫の保護を家庭の庭から行うのが珍しくなくなってきています。恥ずかしながら、わたしはイギリスに来るまでは、そんな環境保護や野生動物保護のような大掛かりなイメージもある活動が個人の庭から始められるなど考えもしませんでしたし、自分事としての関心も薄かったように思います。ですが、関心を持つようになってから日本で Solitary Bee(便宜上、当ブログでは単生蜂と訳しています。solitary = 単独行動をする bee = 蜂)はなんて呼ばれているんだろうと調べたのところ、決まった通称が見つからない。そのうえ、蜂について調べると、ともかく「駆除の仕方」についてのサイトばかり出てくる...。私はイギリス暮らしになってから蜂や野生動物の保護に本格的に関心を持ったので、日本のこのあたりの事情には特別詳しくありませんが、調べた限りでは日本では蜂や虫の保護ばかりか、単生蜂についても認識されていない印象を受け、危機感を感じました(ちなみに、蜂類の中でミツバチなどの社会性のある蜂はわずかで、単生蜂が蜂の種類の9割以上を占めています)

 

イギリスでも、一般家庭の多くは「蜂やテントウムシはかわいいから」という理由で市販の巣箱やバグ・ホテルを置いているだけの人も多いです。だから、課題もまだまだ多いのは事実。ですが、きっかけは「かわいいから保護したい」でも良いと思うのです。すべてはまず関心を持つことから始まって改善していくと思うので、日本でもガーデニングをするなら、まず庭に来る生き物に関心を持って、殺虫剤は予想以上に害が大きいことを知ってほしいなと思います。実際、虫は単純に人間の視点からだけみて益虫・害虫に分類することなどできないはずで、人間から見て害虫がいるから殺虫剤を使えばいいというのは安易な考えですよね。多様な虫や生き物が複雑に影響し合って、ちょうどいいバランスの生態系を築けるような庭をめざすことが、長期的に見て手がかからない庭に繋がり、殺虫剤も自ずと必要ないバランスになるのではないでしょうか。

 

ここまで考えてみると、同様に、除草剤も多くの生き物に害になることが容易に想像できるかと思います。除草剤を使えば、庭に来た生き物が残留した除草剤の毒に触れてしまうからです。雑草との付き合いは大変ですが、ぜひ除草剤を使わない選択をしてほしいなと思います。

 

ガーデニングを通して、ちょっとずつ地球に優しくしたい

Photo by Markus Spiske on Unsplash

ガーデニングを始めたきっかけは様々だと思いますが、きっと多くの人が「かわいいお花を育てて素敵な空間を作りたい」のような理由からガーデニングに興味を持ったのではないでしょうか。私の場合はちょっと特殊かもしれないのですが、もともとカメラが趣味で野生動物の写真を撮ることから動植物や蜂や蝶など全般に関心が広がっていき、自分の庭を持ったことでガーデニングにも興味を持ちました。庭には野鳥などが来ることに気づいてから、さらにワイルドライフ・ガーデニングを追求したいと思うようになり、環境保護への関心も自然と高まっていった感じです。

 

ところで、庭を持つまでは、環境保護はどこか大掛かりで自分ではできないことのように思っていたのも事実です。でも、調べてみると、そんなことはないことが分かりました。いま、人口の大部分が大なり小なりの庭やベランダ、玄関先のスペースなどを持つイギリスでは、ガーデニングを通して個人がちょっとずつ地球に優しくしようという動きが高まっています。きっと、これはイギリスに限ったことではないと思うし、日本でもできると思うのです。それに、かわいい花々がある癒しの庭と環境に優しい庭は両立できるはずなので、ガーデニングを続けるなら少しずつ地球に優しい方法にシフトしていきたいですよね。

 

自分でできることの一例として、イギリスで信頼されている RHS(Royal Horticultural Society = 王立園芸協会)が提案していることを、すこし紹介してみますね。

  • 玄関先や庭のアスファルト・レンガの面積を減らし、地植えや鉢植えの植物の数を増やす(洪水やヒートアイランド現象への対策
  • 垣根や低木を植え、植物の総量を増やす(大気汚染や騒音への対策、二酸化炭素の吸収)
  • クレマチスやツタ類など緑のカーテンを育てる(夏は涼しく、冬は暖かく=省エネに)
  • 庭で育てる植物の種類を増やし、園芸品種ばかりでなく土地に合った植物を育てる(生物多様性を改善できる)
  • ガーデニング用品を選ぶとき、プラスチックやリサイクル不能な素材をなるべく避ける(サステナブルなガーデニングへ)
  • 雨水の貯蓄やお風呂の水の再利用など(節水になる)
  • オーガニックな肥料を使い、殺虫剤や除草剤を使わない(生態系や環境への影響を考える)

などが挙げられています。

 

もちろん、これらを初めからぜんぶするのは無理ですし、そんな必要はないでしょう。でも、これはできる、というものから一つずつ取り組んでいくことは難しくなさそうです。わたしも一気にエコな方法に切り替えるのは難しいので、一歩ずつ着実にできるところから取り入れるようにしています。

 

これまでのところ、

  • ピートフリーのコンポストしか使わない◎
  • 殺虫剤や除草剤は使わない◎
  • 単一種類の芝生しかなかったところを、多様な植物に変える(現在進行中)
  • 垣根・木(引き継いだものを維持)
  • 雨量計を設置◎

などから始めていて、近いうちに雨水の貯水用の容器を設置したり、コンポストかWormery(ミミズの力を借りたコンポスト装置)を入手したいなと思っています。あと、近場のガーデンセンターやオンラインのショップでまとめ買いするのも良いと以前の記事で書いた通り、これも続けていきたいと思います。

 

 

さて、ピートの使用がなぜ危機的な状況になっていて、すぐ止める必要があるのかという問題から、サステナブルで地球に優しいガーデニングについて書いてみました。難し気なテーマではありますが、案外、すぐにできそうなこともあったのではと思います。わたしもガーデニングやエコな生活はまだまだ始めたばかりですが、環境のことについて少しずつ自分なりに学びながら、持続可能な庭造りをしていきたいところです。

 

 

目指すのは「森のような庭づくり」

英国ガーデン日記

“小さなころから、自然や野生動物が大好き。イギリスへ引っ越して、ふつうの家の庭にハリネズミや野うさぎ、カエルが出る環境に驚く。イギリスのガーデン番組で「小さな庭がパッチワークのように集まれば、野生動物の棲み処を増やせる」と頻繁に言っているのに感心し、ブログを通して英国でのエコなガーデニング事情を発信中。本人は新米ガーデナーで、自分の庭づくりは始まったばかりです。”

 

 

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