野生動物の庭~Wildlife Gardening~

刺さない蜂のお家、Bee House って知ってる?【庭に来る単生蜂をガーデニングの味方につけよう】

 

Photo by Jenna Lee on Unsplash

「刺さないタイプの蜂がいる」ということを、知っていますか?蜂と言うと、刺すから怖いというイメージを持っているひとが多いかもしれません。でも、実は世界の蜂の大部分は、単生蜂という部類の刺さない蜂なんです。例えば、イギリスだけでも270種類の蜂がいますが、その9割以上が単生蜂の種類だと言われています。この割合は世界でも同じです。つまり、日本で普段目にする蜂も、多くが単生蜂なんですね。

 

この単生蜂、英語では Solitary bees というのですが、Solitary = 単独行動の + bees = 蜂、という名前の通り、ミツバチやスズメバチのように集団を作らずに、ひっそりと大人しく単独で生活し、守るべき巣も女王バチも居ないので、攻撃性はありません。実際、針は刺す必要がないため退化してしまっていて、その弱さと言ったら、「人間が手で針を持って皮膚に強い力で突き立てたら刺せるかもしれないけど...それでも、蚊に刺されたくらいの感じだろう」と言われているほど弱いんです。

 

いま、イギリスを含め特に欧米諸国では、年々減り続ける蜂の保護のため、この単生蜂の棲み処を増やそうという動きが広まっていて、我が家でも去年から単生蜂の巣箱を置いているのは、これまでの記事でも触れてきた通りです。今回は、「単生蜂の巣箱ってどんなもの?」という疑問に答え、後半は「置いたらガーデニングに何かいいことがあるの?」ということにも触れながら、この巣箱 = Bee House について、そして単生蜂の生活について、もっと詳しく取り上げて紹介したいと思います。

 

単生蜂ってどんな蜂?

単生蜂は、体長が小さなものは5mmほどから、大きなものでも17mmほどと言われています。つまり、大きなものでもミツバチと同じくらいのサイズ感で、かなり小さいサイズの種類も多いということです。色は、蜂のイメージとしてよくある縞模様ではなく、黒っぽかったり、茶色っぽいものもいます。

 

単生蜂は、実は地中に一匹で穴を掘って卵を産む種類も多いです。ですが、木に空いた穴や釘が抜け落ちてできた穴を利用してその中に卵を産んだり、空洞になった植物の枝の中に巣を作るタイプもいます。この空洞に巣を作って卵を産むタイプが、人工的に作られた巣箱を利用することが多いです。いずれも集団で飛び回ることはなく、単独で生活します。

 

空洞に卵を産むタイプの蜂は、泥を混ぜたもので卵が育つ小部屋を仕切ったり、ハキリバチの種類のように葉や花びらを使って入り口に封をしたりします。芸が細かいですよね!巣箱を置いてこんな蜂が来てくれたら、観察するのも楽しいはず。刺さないので、子どもがいる家でも安心です。

 

実際に、単生蜂の巣箱を置いてみた

私は去年ガーデニングを初めてから、単生蜂の巣箱を置いてみました。実際に見るのが分かり易いと思うので、さっそく紹介したいと思います。

 

Bee House = 巣箱の設置

お花の近くに置いた、単生蜂の巣箱=Bee House!

写真の巣箱は Wildlife World というメーカーのもの。巣穴の直径は8mmで、イギリスはもちろん、世界でも多くの種類の単生蜂が利用する巣穴の平均的な直径になっています。また、巣箱が分解出来て、中の管理ができるのも選んだポイントでした。

 

じつは、巣箱が届いて設置したのが、既に5月末。単生蜂は4月半ばから “Red Mason bee(レッド・メイソン・ビー)” という種類が飛んでおり、若干出遅れていたので、巣箱を使ってもらえるか心配でした。ひとまず、ロックダウン中のためオンラインで入手したローズマリーやゲウムなどの花の横に、巣箱を設置。理想的な高さとしては1.5メートル以上となっていましたが、手に入った台の高さは90センチ。これはギリギリそうですが、結果はいかに...。

 

6月は、ハキリバチの季節

レッド・メイソン・ビーが家の外壁周りを飛び回り、レンガの隙間にぴったりの穴がないか探しているのは目にしていました。でも、6月ともなると、既に入居先は見つけていたはず。彼らが巣箱を使ってくれることはありませんでした。

 

一番上の列の右から二番目、新しく完成した巣穴が埋まっています。

6月以降の夏からは、ハキリバチの季節です。彼らは成虫になって巣穴から出てくるのが遅いので、この時期からメスが巣穴探しを始めます。私の巣箱は暫く動きがなかったものの、6月中旬のある朝、一つの穴が埋まっていたのです!嬉しい瞬間でした。ちょうど巣穴を見ていると、一匹のハキリバチが丸く切った葉を持って隣の巣穴に入っていくのも確認!!このあと、隣の巣穴も同じく卵を産んで、丸く切った葉で封をしていました。写真では、一番右の巣穴が古い方で、葉っぱが茶色く乾燥しています。その一つ左、右から二番目の巣穴は丸く切り取られた緑の葉っぱで封をしてあるのが分かるかと思います。新しいので、まだ葉っぱは緑色です。

 

どうでしょう、機用に丸く切った葉を使うなんて、なかなか可愛らしいと思いませんか?写真こそ撮れませんでしたが、偶然葉っぱを持って巣穴へ戻ってきた単生蜂を見たときは、とても感動しました。それまで蜂なんてちゃんと見たことがありませんでしたが、実際に知ってみると、こんな巣を作るのかと驚かされます。

 

次の世代の子供たちが、巣穴の中で越冬する

さて、単生蜂は体も小さく、母親の蜂は大仕事を終えたら年を越すことはありません。子供たちは、母親が葉や土で仕切ったひとつひとつの小部屋のなかで、一緒に入れてもらった花粉と密を食べて育ちます。ハキリバチの場合は、葉で包まれた小さな葉巻のような繭のなかで、年を越し、翌年の5月末~6月初めに成虫になって飛び立ちます。いま、私の巣箱の中でも、ハキリバチの次の世代が、暖かくなって外に出てくるのを待っているんですね。無事巣立ってくれるよう願うばかりです。

 

次世代は、巣立った巣箱に帰ってくる

Photo by Slawek K on Unsplash

母親の単生蜂が卵を産む時、まず巣穴の奥にメスになる卵を産み、入り口の近くにオスの卵を産みます。これは、一説には入り口付近が鳥などの外敵の犠牲になりやすく、次世代の卵を産む役割をもつメスを巣穴の奥に隠したいというのもあるようです...自然は酷ですね(笑)出てくるときは、オスが先に巣立ち、暫くしてメスが出てきます。

 

巣立った後は、メスの蜂がひとりで巣穴を探し、次の世代の卵を産むのですが、このとき、単生蜂は自分が巣立った場所の近くに戻ってくることが多いと言われています。これは、体が小さく遠くまで飛べないことも関係するのかもしれません。一度巣箱を置いて保護活動を始めれば、毎年、その子孫を見ることが出来るんです。巣箱の管理をし、長距離を飛べない単生蜂のために、この記事の後半で触れたような花粉の多い花々を植えれば、自分の庭からその地域の単生蜂の数を増やしていくことが出来るって、素敵だと思いませんか?

 

単生蜂の巣箱の選び方や管理のしかた

 

巣箱を実際に置いてみたいというひとのために、選び方や管理の仕方を書いておきますね。日本でもやってみたいという人がいると良いのですが...(笑)こちらでは、子供のいる家や学校、わたしのようなガーデニング好きの人などが巣箱を置いていて、ガーデンセンターで色々な種類の巣箱が売っています。ただ、種類が多く出回っているぶん、作りが適当なものもあるのも事実なのです。やるからには、ちゃんと保護に繋がるものを選びたいですよね。特徴を知れば、DIYが好きな人なら自分で作ることも可能です。

 

よい巣箱の特徴

  • 巣穴の直径が4mmから10㎜くらい。厳密には、その国に住んでいる単生蜂の種類によって異なります。イギリスの種類の場合、平均的には 8㎜が合っています。
  • 巣穴が分解して開けたり、掃除ができること。
  • 巣穴の奥行きが15-16cmはあること。巣穴の後ろが閉じられていること。
  • 巣穴の入り口の上に、雨を防ぐ屋根がせり出した形に付いていること。

特に、シーズン終わりに開いて掃除ができることと、雨などの侵入を防ぐよう巣穴の後ろが閉じられていることは、重要。なぜか、雰囲気だけ真似て作ったような、後ろの空いた筒が並んでいるだけの巣箱なども出回っているのが残念なんですよね。あと、巣穴の奥行きが短すぎると、生まれてくる次世代の雄雌のバランスが悪くなってしまうのだそう。

 

IKEA の Bee Home というのも出てます

スウェーデン発の家具メーカーのIKEAが、なんと「Bee Home」というオープンソースの単生蜂の巣箱を作ったようです。日本で始めるなら、こんなのも参考にできそうですよね!

 

もしこのような形で作るなら、大きすぎないものが良いと思います。大きすぎる巣箱は多くの蜂が住めるぶん、天敵の標的にもなりやすく、また巣箱の衛生管理の面でも難しいからです。

 

冬になったら

Photo by Galina N on Unsplash

冬になったら、巣箱を霜の降りない物置など、乾燥していて気温の低い場所に移します。もし、繭の管理までしたい場合には、巣箱を開けて繭を回収しても良いでしょう。私は今回このつもりで、唯一開けられない一番上の段の巣穴にオーブンシートのライナーを敷いていたのですが、蜂が封をする際に巣穴の外壁とライナーをくっつけてしまったみたいで。引っ張っても取れる気配がなかったので今年は諦め、新しい蜂が同じ巣穴を使わないよう、巣立ち後に封をする予定でいます(これは、もし病気や寄生虫などが発生していたときのために、蔓延防止の理由からです)。巣穴の掃除をするのが難しい場合には、2年に一度は巣箱を新しいものにするのでも、良いです。

 

春になってタンポポや桜が咲く頃になったら、巣箱を外へ出しましょう。繭を回収した場合には、この時期に出口の穴を開けた箱などへ入れて、外へ出します。わたしの巣箱も、庭のタンポポが咲き始めた3月後半くらいから、外へ出しています

 

今年は、この巣箱の近くにワイルドフラワーの種がブレンドされたシードボールで種まきした大きな植木鉢(ウイスキーの樽を半分にしたもの)を置きました。きっと、巣穴から出てきたハキリバチや新しく庭を訪れる単生蜂にとって、栄養のある花が咲いてくれるはず。去年より庭の花の種類が増えるので、今から楽しみです。

 

庭で蜂の保護をするメリット

Photo by Henry & Co. on Unsplash

自分の庭で蜂の保護をすると、その地域の単生蜂の数を徐々に回復させることができます。そうすると、単生蜂はお庭の花々を飛び回り、受粉してくれることになりますよね。これは、家庭菜園で野菜やフルーツを育てている人にとって、特に大きなメリットだと思います。実際に、Bee House を置き始めてからリンゴの収穫が増えたとか、家庭菜園で育てている豆の数が明らかに多くなったという話はよく聞きます。

 

さらに、単生蜂のことを考えて様々な種類のお花を植えたりしていけば、それは他の受粉を担う昆虫にとっても良い庭になります。昆虫たちが増えれば、そのお庭の生態系の一番下の層を支えてくれることになるので、そこから野鳥が集まってきたりして、ゆくゆくは生態系のバランスが回復することになるんです。これは、害虫ばかりが増えて悩んでいる人などにとって、とてもメリットがあるはず。様々な野鳥やカエル、小動物などが集まれば、害虫を食べてくれるからです。単生蜂へ関心を持つことがきっかけとなって、その延長線上にある良い環境のお庭が増えると良いなと思います。

 

 

単生蜂は、残念ながらまだ日本での知名度はないようですが、この記事を読んでちょっとでも興味を持ってくれる人が出てきたら良いなと思います。わたしもBee House での保護は去年始めたばかりなので、また今年どうなるか観察しつつ、知識もアップデートしていきたいなと思っています。

 

まずは、庭造りが始まったばかりなので、蜂や蝶などの昆虫や野生動物全般にとって良い環境となるよう、様々な種類の花や木を植えていきたいです。

目指すのは「森のような庭づくり」

英国ガーデン日記

“小さなころから、自然や野生動物が大好き。イギリスへ引っ越して、ふつうの家の庭にハリネズミや野うさぎ、カエルが出る環境に驚く。イギリスのガーデン番組で「小さな庭がパッチワークのように集まれば、野生動物の棲み処を増やせる」と頻繁に言っているのに感心し、ブログを通して英国でのエコなガーデニング事情を発信中。本人は新米ガーデナーで、自分の庭づくりは始まったばかりです。”

 

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